ほどく術があるなら

 またしても心の痛み、恐怖、孤独、望んだもの、諦めたもの、あるいはそういうものの絡まった核、みたいなのに気付いた。気付いたっていうか、表層の反応としてのそれは前からわかってたけど、今回はその奥にある記憶とか情動の絡まりみたいなのもある程度見える気がする。理解するスキーマを持っているのもあって、以前よりも客観的に見通しが付くような。ただ怖さを感じる、っていうだけではなく。だからほどいていくこともできるのかもしれない。
 自分には、彼らの側にいられたり、参加することはできないんだ、とそんな風に感じていたのか。そういつの間にか決め込んでいた。なぜ?劣等感とか、不安からだったかもしれない。知らぬ間に、いや自ら選びとったことなのか、私は、彼らの世界から「外れていた」。「外れた」自分を理解されることはない恐怖、近づけない恐怖。あるべき姿でない自分?参加する資格がない、あるいは資格とかそんなこと以前にそうできる存在ですらない。存在の地位のようなもの、いやそれ以上の、存在の質のようなものの違いですらあったのかもしれない。ガラスか何かがあるのか、遠くて隔たりのある世界。それは自分が自分を守るために創り出したのか、望んだものが叶わないという挫折がそうさせたのか。
 そうはいっても、それでも日常は普通に過ぎていくし、取り立てて客観的に酷いこと、苦痛なこと、耐え難いことがあるのか、といえば、そうでもない。ただどこか、一歩間違えれば窒息してしまいそうな、そんな空気が世界を覆っているような。すべてが破綻する恐れに包まれているような。そんな中で身動きが取れず、ただ言われたまま、必要なだけの行いをするしか、それ以外の手足の動かしようがない。
 そんな滑っていく時間の中で、何を望んで、手を伸ばそうとしてもできなくて、でも傍観している変わっていくもの、人、自分の中の何か。どこまでが自分の手で掴んだ、真実性を見いだせた本当だったんだろう、どこまでが思い込んだ幻だったんだろう。