ぐだぐだ

 サンデル教授の講義第二回を見ました。見るまでになんか以下のようなことをだらだら考えていました。
 普遍的というより公共的・一般的・客観的な正義、道徳というものを求めての議論といったほうがあっているかな。や、でもそういうのを突き詰めれば普遍に到達しうる、みたいな考えというか、それを志向している点が西洋思想的にはありそうかな?
 でもあれだ、個人によってあらゆる面で何もかもが違うにしても、人が人である限りそれらを捨象しても残る「本質」や共通する条件があって、それに基づいて最善の「一般ルール」を確立しようとしている、かは知らないけど方法論としてはそれぐらいしかなさそうだと思ったり。
 あと、誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのかを読んだ時に、仔細は忘れたけど、筆者が仏教的・東洋的な考え方に言及して、善の最大化を求める観点からすると物足りない、というようなことを書いていて、ああ、なんかそういうのを求めてるのか根本的に、とハッとした気分になった。
 自我や欲望を薄めて平静に生きていこう、自分が受け止め方を変えることで今ある状況でも満足しよう、という発想はあまりないのかな、と。著者がそうであっただけかもしれないけど。それに欲望を薄める云々は一人ひとりが選択する生き方ではあっても、社会全体や政治を考えたときの観点とはちょっと違うのかもしれないし。
 前回の記事では正義への意志がすごいとか褒めたけど、でも一般的正義や道徳を建てようとして、あるいはそれがどこかにあるというのを前提(目標)に、こういう議論をしていることにどうにも違和感があるなあと思い直したりもした。
 人間は自我で動いていて、そこにおいて自分にとってよいこと・悪いことつまり価値がそれぞれの事象に対して解釈されるだけで、それを離れて公共的・社会的に一般化できるって発想がなんか限界があるよなって。そもそも同じ出来事やモノが同じ人物にとって常に同じ価値を持つということすら保証できないのに。
 前回の、同意が手続きのあるなしが重要という論点も、結局のところ殺されることを欲望していないのに殺されるのは嫌だ、ってのが底にあって、それが同意や手続きを通すことでそれをあなたも欲望しましたよね、っていうふうに巻き込んでいるだけなんじゃないかなと思ったり。
 でもそれなら同意も何もなしに殺したって自我の欲望に沿っただけって言うふうになる気がするから、同意や手続きがあることで何かしら「公正」で道徳的になるっていうのは説明できないか。まあ相手の殺されたくないという欲望を無視するのは良くないことだという判断はありそうだ。
 じゃあそういう一般ルールはありうる、ってことかな?たとえそういうルールを無視しても(罰せられるとか非難されるとかの)不利益はないという状況下でも、良心の呵責というのはありえるとは思うから、規範というのが完全に自我の利益に依存して選ばれるのかというと、ちょっと違う気はする。良心の呵責を感じたくないってのだって自我の欲望じゃないか、っていうのはそうだけど、そもそもそういう良心と呼ばれる欲望があるという点で。
 「定言的」って訳されてるcategoricalっていうのは、何でこの語なのか以前はよくわかってなかったけど、つまり、ある行為がある範疇のものであるというだけで、どんな状況でもなすべきでない、あるいはなされるべきだ、ということでしょう。殺人は殺人というだけで悪い。殺されるのが最低の悪人だろうと、それによってどんなにみんなの幸福が増大するとしても悪い。
 ある行為がある行為であるというだけで悪い・いい、というのはわかるようでもあり、うーんっていう感じが。結局のところ、物事の善し悪しを、局所的にしか判断できない人間が、現実的な方策としてカテゴリーで括って取り扱ってるだけなんじゃないかという気がする。あることが限定された場では全会一致で悪であったとしても、時間や空間を広げればどう影響するかなんてわからない。それは複雑に考えすぎているかもしれないし、実際限定された場で悪とか何かを決定しなければならないのは変わらないけど。
 でもその辺りなんだよな違和感というか限界というか。だって現代みたいな科学技術がそこら中にあったり車が走ってたりするような社会がいいですねってみんなが同意したからそうなったというわけでもないのに、そういう社会に生まれた人は基本的に受け入れざるをえない状況になっている。それはいいことなんですか?って問われたらどうするんだろうっていう。ああでもそういう論点も聞いたような覚えはあるか。
 今回の功利主義の命に値段はつけられるか、喜びに低級なものと高級なものがあるかとかにも色々思いました。
 今回のはJustice: What's The Right Thing To Do? Episode 02: "PUTTING A PRICE TAG ON LIFE" - YouTubeでも。ていうか全部ありますが。