エドワード・サピア『言語―ことばの研究所説』
あまりにも書いてないしメモがてらに。ざっとは読んだつもりなのだけどあまりしっかりと把握・消化はできてないかも。
- 作者: エドワードサピア,Edward Sapir,安藤貞雄
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1998/11/18
- メディア: 文庫
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「サピア=ウォーフの仮説」でたぶんよく知られているであろうサピアによる、言語というシステムについてかなり精緻な考察を展開しているという印象の著作。言語の究極的原理みたいな抽象的すぎるレベルの話でもなく、かといって具体的な言語事実をまとまりなく羅列していくだけでもない。各個別言語からある共通の言語形式にかかわる事実をあげつつ、無理のない程度の抽象化をして、言語システムの成り立ちを求める、という誠実な帰納的研究を行っているという印象を受ける。
章のタイトルを見て気づいたけど、扱う言語事象のレベルが、形態論から類型論それから歴史言語学と、ミクロからマクロに並べられているようだ。
素人目からすると驚きなのは、個別言語に関する豊富な知識。もちろん英語の事例がたぶん一番多いのだけれど、ギリシア語やラテン語、アイルランド語、さらには、ヌートカ語やらシル語やらのネイティブアメリカンとかアフリカの言語、とかの話が細かいとこまで出るわ出るわ。これだけ高名な学者なのだから、それだけの知識があるのも当然だと頷けるのだけど、やはりすごいなあと感じ入ってしまう。アメリカ構造主義言語学の流れにある人なのでご多分に漏れずアメリカ先住民の言語を研究調査しているようだ。記述を読む限りヌートカ語がその対象なのだろうか。他にもやってるのかもしれない。
アメリカ構造主義言語学の説明を読むと、「意味は複雑すぎて扱えないのでできるだけ回避」という特色があるらしい(習った覚えがある)のだが、本書では言語の形式と概念との関わりについて4,5章でかなり重きを置いて述べられており、言語概念の細かい分類まで行われている。そういう点ではアメリカ構造主義言語学の範疇に収まらない考察を行っていると言えるのだろうか。私が最も惹かれたのもこの部分で、概念をどう形式化しているか(ある言語がどのような文法範疇を持っているか)という問題意識が、サピア=ウォーフの仮説の形成に繋がっているのだろう。